恋愛市場価値という物差しで採点すると、僕はだいたい下に着地する。172cm、痩せ型、顔で得をした覚えはない。
それでも23歳から29歳までの6年、僕は値段をつけられる側の椅子に座っていた。ギャラ飲み約200回、レンタル彼氏で指名約80人。次の指名が入るかどうかで、値打ちが毎週返ってくる場所だ。
そのうえで書く。スペックは足切りには効くが、指名には効かない。この記事では、その構造と明日から何をするかを書く。
なさ男順位表の中の話じゃない。順位表の外側の話をする。
恋愛市場価値とは何か。この言葉が隠している前提
恋愛市場価値は、恋愛や結婚の相手としてどれだけ選ばれやすいかを、市場になぞらえて表した言葉だ。比喩そのものが悪いとは思わない。問題は、この比喩を使った瞬間に、検証されないまま紛れ込む前提がいくつかあることだ。そこを外さない限り、何を上げても手応えは返ってこない。
恋愛市場価値という言葉で実際に測られているもの
世間で市場価値の話をするとき、材料はだいたい決まっている。年収、身長、学歴、職業、年齢、顔。この六つに点をつけて合計を出し、上位何パーセントという言い方をする。
数えられるものだけが並んでいるのは偶然ではない。数えられないものは順位表に載せられないからだ。つまりあの点数は、男の価値を測った結果ではなく、測りやすいものだけを集めた結果でしかない。測定できる範囲が先にあって、そこに入らなかったものは議論が始まる前に外へ置かれている。ここを取り違えると、順位表の上位に行くこと自体が目的になってしまう。
抜けているのは「誰の市場か」という主語
市場という言葉には、本来かならず主語がつく。株式市場、中古車市場、労働市場。どれも誰が何を買う場所かが決まっているから、価格が一つに定まる。
恋愛市場価値の話には、この主語がない。婚活の場と、夜の街と、職場の飲み会では、買い手の顔ぶれがまるで違う。同じ男が、片方では最後まで話しかけられず、もう片方では席を取り合われる。23歳から3年間バーのカウンターの内側に立っていたが、外の世界での評価と、あの店の中での評価が一致していた記憶はない。主語のない市場価値は、価格ではなくただの気分だ。
買い手は一人ずつ違う。物差しは束になっている
もう一つ。株価が一つの数字に決まるのは、同じ銘柄を大勢が同じ基準で売り買いするからだ。恋愛にはその仕組みがない。買い手は一人ずつ独立していて、しかも全員が別々の採点表を持っている。
年収を見る人はいる。まったく見ない人もいる。アプリ経由で会った年上の女性は60人を超えるが、相手の収入が自分より低いことを最初から前提にしている人にも何人も会った。彼女たちが見ていたのは、明らかに別の項目だった。一人ひとりが違う採点表を持っている以上、全員分を平均した「あなたの価値」という一つの数字は、どこにも実在しない。実在しない数字を根拠に自分を下位だと結論づけているなら、それはさすがに割に合わない。
それでも順位表が求められてしまう理由
ここまで書いても、市場価値の議論がなくならないことは分かっている。理由は単純で、順位表は楽だからだ。
自分がなぜ選ばれないのかを本気で考えるのはしんどい。相手の事情も、場の選び方も、自分の振る舞いも、全部が変数になる。それに比べて「年収が足りないから」で終わらせるのは一瞬で済むし、自分の中身を疑わずに済む。順位表は、敗因の外注先として便利なのだ。僕にも覚えがある。指名が入らない週に、身長のせいにして終わらせたことが何度もあった。ただ、外に出した敗因は、いつまで経っても手元に戻ってこない。



順位表は楽だ。楽だから、そこで止まる。僕もしばらく止まっていた。
スペックは足切りには効く。指名には効かない
ここで極端に振りたくなるが、振らない。「スペックなんて意味がない」は嘘だ。スペックははっきり効く。ただし効く場所が限定されていて、多くの人がそこを混同している。効くのは足切りで、効かないのは指名のほうだ。
足切りと指名は別のゲームだ
レンタル彼氏をやっていた頃、仕事の入り方は二段階に分かれていた。まず一覧の中で候補として残るかどうか。そのあと実際に会って、次にもう一度呼ばれるかどうか。前者が足切りで、後者が指名だ。この二つは、効く材料がまるで違う。
| 比較する軸 | 足切り | 指名 |
|---|---|---|
| 判断にかかる時間 | 数秒 | 数時間から数ヶ月 |
| 見られる材料 | 写真、年齢、体裁、清潔感 | 会話、機嫌、記憶、距離感 |
| 効くもの | 条件やスペック | 態度と扱われ方 |
| 落ちる理由 | 条件が合わない | 一緒にいて疲れる |
世の中の市場価値談義は、ほぼ全部が左の列の話をしている。左の列だけで戦っている限り、条件で上回る相手には構造的に勝てない。だが、関係が続くかどうかを決めているのは右の列だ。左の列は入場券で、右の列が本編である。入場券の値段の話ばかりして、本編を一度も観ないまま消耗している人が多すぎる。
足切りの大半は、生まれつきではなく手入れで越えられる
救いがあるとすれば、足切りの基準は思っているより低いところにあることだ。数秒の判断で落とされる理由は、年収の桁ではない。写真の暗さ、伸びた爪、かかとの潰れた靴、洗っていない襟元。体感では、ここで落ちている人が一番多い。
僕は172cmでイケメン未満のまま6年間やってきたが、この部分にだけは金を使い続けた。服はユニクロと古着で、美容室は月に1回。使ったのは爪と靴と匂いの三ヶ所だけだ。何にいくらかけたかは清潔感のある男の作り方に手順ごと書いたので、ここでは繰り返さない。伝えたいのは一点で、足切りは造形の勝負ではなく手入れの勝負であり、手入れは今日から始められるということだ。
指名を決めているのは、測れない側にある
では右の列は何で決まるのか。僕の答えは、相手が自分をどう扱われたと感じたか、だ。
指名が続いた回の共通点を、あとから並べて数え直したことがある。会話の内容ではなかった。前に聞いた話を覚えていること。約束の時間に遅れないこと。こちらの機嫌が毎回同じであること。出てきたのはその三つだけだった。どれも数字にならず、プロフィールに書く欄もなく、順位表にも載らない。載らないから軽く扱われているが、関係の寿命を決めているのは全部こちら側だ。



入場券の値段で悩んでいるうちは、まだ本編が始まっていない。
値付けされ続けた6年で、実際に何が売れていたか
ここからは僕の話をする。スペックが足切りにしか効かないと言い切る根拠は、理屈のほうにはない。金も肩書きもない男に値札がつき、それが2年間その値段のまま回っていたという事実のほうにある。
時給2,000円の値札の内側で買われていたもの
レンタル彼氏の報酬は、時給2,000〜3,000円に指名料が乗る形だった。2年間の総収入はおよそ120万円。派手な数字ではない。ただ、指名は約80人、累計でおよそ500時間ある。
その500時間、僕は何を売っていたのか。振り返って言えるのは、話術ではないということだ。僕は面白い話ができない。ネタも持っていない。売れていたのは、相手が自分の話を最後まで話し切れる時間のほうだった。遮らない。評価を挟まない。前回の続きから入る。それだけで次の予約が入る。年収でも身長でもないものに実際に値段がつき、その値段で2年間ずっと回っていた。これが僕の持っている一番硬い証拠だ。
ギャラ飲みで見た、条件がいいのに続かなかった男たち
逆側の観察もある。男性キャストとしてのギャラ飲みは約2年、回数にすると約200回。手取りは1回5,000円から1万円ほどで、月にすると5万円から8万円あたりに収まっていた。稼ぎとしては地味な仕事だが、観察の材料だけは大量に手に入る。
現場には、僕より条件のいい男がいくらでもいた。背が高い。名の通った会社にいる。顔が整っている。彼らは最初の卓では確実に強い。ただ、次に呼ばれるかは別の話だった。自分の話を長くする。場の空気より自分の見栄えを優先する。女性の話に値踏みを挟む。この三つのどれかをやった男は、条件と関係なく次がなかった。条件は初回を作る。次を作るのは態度だ。夜の仕事を種類ごとに収入と向き不向きで仕分けた話は、男の夜職の種類マップのほうに整理してある。
29歳、自分の市場価値がゼロに見えた日
偉そうに書いているが、僕はこの構造の一番痛いところで一度落ちている。
20代のあいだに女性から受け取った金額は、現金も家賃も食事も物も全部ひっくるめて、自己推計でざっくり1,000万円相当になる。それだけ選ばれる側で回っていたのに、29歳になったとき、僕の手元には貯金も住む場所もスキルも残っていなかった。数年ぶりに履歴書を開いて、書ける行が一つもないことに気づいた午後のことは、今でもわりと鮮明だ。
あの時期、自分は値段のつかない人間になったと本気で思っていた。市場価値がゼロに見えた、というのが一番近い。ただ、あとから考えると違う。ゼロになったのは価値ではなく、僕に値札を貼ってくれていた場所のほうだった。同じ人間のまま、買い手のいない場所に立てば、価格はつかない。価格がつかないことと、価値がないことは違う。この二つを混ぜたまま自分を採点していると、人間はいくらでも落ちていける。



値段がつかない場所に立っていただけだった。気づくのに1年かかった。
女性は男の何を採点しているのか
相手側の話を書く。ここを飛ばすと、市場価値の議論はすぐ「女はどうせ金だ」に着地して終わる。6年間、採点される側から見えていた範囲で、実際の採点表がどういう形をしていたかを書いておく。
採点表は人ごとに違う。だから平均点に意味がない
まず前提として、女性が共通の採点表を持っているという想定が間違っている。年上の女性を60人以上見てきて、ここははっきり言える。
自分より稼ぐ男でないと落ち着かない人がいる。逆に、自分の稼ぎに口を出さない男でないと無理だという人もいる。仕事の話を分かってほしい人と、私生活に仕事を一切持ち込みたくない人がいる。同じ「年上の女性」という括りの中で、求めているものが正反対になることが普通に起きる。平均点を上げる努力が空回りするのは、平均という買い手が存在しないからだ。
減点で効くのは、清潔感と態度のほぼ二つ
ただし、共通している部分もある。それは加点ではなく、減点のほうに集まっている。
減点が入るのは、手入れの痕跡が見えないこと。店員に対する態度。そして不機嫌を人前に出すこと。この三つは、相手が誰であってもほぼ確実に効く。とくに不機嫌は強い。稼いでいる女性ほど、日中に他人の機嫌を取らされている。私生活でまで機嫌を取らされる相手を、彼女たちは選ばない。裏を返せば朗報でもある。全員に共通しているのは減点側だけで、しかもその数は多くない。
加点は文脈で値段が変わる
一方の加点は、場面ごとに値段が変わる。同じ長所が、相手によっては欠点として処理される。
料理ができることは、帰宅が遅い経営者の女性には強い加点になる。だが、自分の部屋に他人を入れたくない人にとっては何の意味も持たない。聞き上手も同じで、話したい人には効き、決めてほしい人には物足りなく映る。年下であることさえ、可愛がりたい人には加点で、対等に議論したい人には減点だ。加点は能力ではなく、組み合わせで決まる。だから「何を上げるか」より「誰に対して上げるか」のほうが先に来る。
余裕は口座残高ではなく、振る舞いとして見られている
市場価値の話でよく出てくる「余裕のある男」も、実際に見られているのは残高ではない。
急かさないこと。返信が遅くても騒がないこと。断られても態度を変えないこと。この三つが揃っていれば、貯金がなくても余裕のある男に見える。逆に、収入が高くても返信の遅さを責める男は、余裕のない男に分類される。僕は貯金が数万円しかない時期に「余裕あるよね」と言われたことが何度もある。あれは財布を見て言われた言葉ではない。余裕とは、相手の自由を脅かさない態度のことだ。金がかからないという点で、これはかなり公平な項目だと思っている。



共通しているのは減点側だけだ。加点は、相手ごとに値段が違う。
市場価値を上げるという言い方をやめる。代わりにやること
構造の話は以上だ。ここからは淡々と手順にする。市場価値という一つの数字を上げようとするのをやめて、四つの作業に分解する。順番には意味があるので、上から順に手をつけてほしい。
足切りの減点をゼロにする
数秒で落とされている理由から潰す。爪、靴、匂い、髪、写真の明るさ。ここは造形ではなく手入れの領域で、月に数千円あれば足りる。最初に置くのは、四つの中でいちばん短い期間で反応が変わるからだ。
自分が立っている市場を疑う
今いる場所の買い手が、あなたの持ち物を評価する人たちなのかを確認する。同じ条件でも、場が変われば扱いは変わる。同世代の集まりで一度も刺さらなかった男が、年上の女性が集まる場では最初から歓迎される、ということが実際に起きる。
平均点ではなく、一人の採点表を読む
気になる相手が何を見ているのかを、想像ではなく本人の言葉から拾う。何にお金を使っているか。何に疲れていると言ったか。どんな男の話をするときに機嫌が悪くなるか。採点表は、たいてい本人が喋っている。
態度の三点を固定する
覚えている。遅れない。機嫌が同じ。指名が続いた回の共通点はこの三つだけだった。派手さはないが、指名の側で効くのはここに集中している。三つとも、才能ではなく運用の問題だ。
この四つに、生まれつきの要素は一つも入っていない。順位表の上位に行くための作業ではないので、達成感も地味だ。ただ、やった分だけ相手の反応が変わる項目は、この四つに集中している。選ばれる側の振る舞いをもっと細かく分解した話は、貢がれる男の特徴7つのほうに書いた。あちらにも顔と年収は出てこない。
市場価値の話が壊れるとき
最後に、この話が悪い方向に転ぶパターンを二つ書いておく。どちらも、市場価値を気にしていた人がそのまま滑り込みやすい場所だ。脅すつもりはないので、注意書きとして淡々と読んでほしい。
値踏みを相手に向け返した瞬間に壊れる
市場価値の議論を続けていると、採点される側から採点する側に回りたくなる瞬間が必ず来る。年齢がどうだ、見た目がどうだと、今度は相手に点をつけはじめる。
気持ちは分かる。ずっと点をつけられていれば、つけ返したくもなる。ただ、これをやって関係が続いた男を、僕は6年間で一人も見ていない。値踏みは、していることが必ず相手に伝わる。伝わった瞬間、その人はあなたの前で気を抜けなくなる。選ばれる側の条件を、自分の手で壊す行為だ。都合よく扱われている感覚に疲れている人ほど、この反転に足を取られやすい。
値札のつく関係に寄せるときの注意
もう一つ。市場価値に疲れた人が、金銭のやり取りが前提の関係へ流れていくことがある。値札がついている場所は、少なくとも評価の基準が分かりやすいからだ。
気持ちは理解できるが、あちらにはあちらの消耗がある。相手の機嫌が自分の収入に直結する状態は、想像よりずっと精神を削る。何が起きるかはママ活はやめとけと言われる理由のほうで検証した通りだ。線引きも書いておく。金銭を対価とした性行為は売買春であり違法で、このサイトでは扱わない。扱うのは18歳以上の大人同士による、食事や会話といった合法的な範囲の関係だけだ。



点をつけ返したくなったら、いったん降りたほうがいい。あれは伝わる。
足切りの減点と、指名の側で効く態度。この2つを自分で数えられるように並べておいた。
足切りの減点と、指名に効く態度のチェック(10項目)
順位表をつける道具ではない。数秒で落とされる理由と、関係が続くかどうかを決める側の項目を並べただけだ。
当てはまる項目にチェックを入れると、その場で判定が出る。
入力した内容はブラウザの中だけで処理され、どこにも送信されない。
恋愛市場価値についてよくある質問
平均点を上げるより、あなたの点が高くつく場所へ移れ
最初の問いに戻る。恋愛市場価値とは何か。僕の答えは、買い手ごとに違う採点表の束であって、一本の物差しではないだ。だから全員分を平均した「あなたの価値」という数字は、最初から存在しない。存在しない数字を根拠に自分を下位だと決めているなら、そこはもう一度疑っていい。
そのうえで、スペックが無意味だとは言わない。スペックは足切りに効く。ただし足切りは入場券で、越えるだけなら手入れでほぼ足りる。関係の寿命を決めているのは、覚えている・遅れない・機嫌が同じという、順位表に載らない側だった。載らないから軽く見られているだけで、実際に効いていたのはずっとこちらだ。
最後に本音を書く。僕は6年間ずっと値段をつけられ続けて、29歳のときに何も残っていない自分を見た。あのとき自分の市場価値はゼロに見えたが、実際にゼロだったのは価値ではなく、僕が立っていた場所の買い手のほうだった。採点表は、あなたのほうから選び直せる。年収の桁は今日は変えられない。だが、どの市場に立つかと、どういう態度でそこに座るかは、今日から変えられる。
明日やることを一つだけ挙げるなら、爪を切って靴を磨くところからでいい。順位が上がる作業ではないが、足切りで落ちる理由が一つ減る。市場価値という言葉から降りるのに、精神論はいらない。構造さえ分かれば、やることは意外と地味で、意外と少ない。



点数を上げるより、場所を変えるほうが早い。僕からは以上だ。

