レンタル彼氏を利用する女性の心理。指名80人の僕が見た客層

「レンタル彼氏を2年やっていた」と話すと、質問はほぼ決まっている。「どういう人が使うの?」だ。聞く側は、たいてい答えを先に持っている。寂しい人でしょ、と。

違う。指名をもらった約80人のうち、その一言で説明のつく人は数えるほどだった。彼女たちが買っていたのは彼氏役ではなく、値踏みも詮索もされない数時間だ

この記事では、25歳から27歳の2年・約500時間で見た客層と依頼理由の類型を書く。特定を避けるため、全部を類型に丸める。

なさ男

「寂しい人でしょ」で片づけられるのが、いちばん失礼だと思っている。

目次

レンタル彼氏を利用する女性の大半は「寂しい人」ではない

80人の顔ぶれを思い出して最初に出てくる感想は、驚くほど普通だったということだ。特別な事情を抱えた人の集まりではない。年齢も職業も散らばっていて、共通点は属性のほうにはなかった。まず客層の分布から淡々と開く。

年齢は20代後半から50代。中心は30代だった

僕が受けた依頼の年齢層は、下が20代後半、上が50代だった。数として一番多かったのは30代で、体感では半分近くを占めていたと思う。40代と50代からの依頼も一定数あり、2年やっていれば珍しくもなくなる。

年齢が上がるほど、依頼の内容は落ち着いていく。食事、散歩、展示。若い層のほうが「デートの形」を求める傾向があり、上の層は形式より過ごし方を指定してくることが多かった。20代前半がほとんどいなかった理由は、次に書く。

職業は会社員が最多で、経営者・管理職、自営業、主婦も混じる

職業でいえば、会社員が圧倒的に多い。次に管理職や会社を経営している人、自営業の人。主婦からの依頼もあった。夜職の人も少数いたが、こちらから職業を聞くことはないので、話の中で出てきたぶんだけの話だ。

職種はばらばらでも、共通していたことが1つある。自分の裁量で数万円を出せる人だということだ。誰かに相談せずに、自分の財布から数時間ぶんの金を出す判断ができる。これは年齢よりも職業よりも強い共通点だった。

学生がほとんどいなかった理由は、単純に料金だ

客層が働いている層に寄る理由は、心理でも属性でもない。料金だ。時給の設定に指名料が乗る仕組みなので、数時間頼めば金額はそれなりになる。学生の可処分所得では、まず出ない額になる。

この料金の壁が、結果として客層を決めていた面はある。自分の稼ぎから出す人は、その数時間を無駄にしない。用事が明確な依頼が多いのは、たぶんそのせいだ。

個人が特定できる書き方はしない。だから類型として書く

ここで書き方の断りを入れておく。職業と年齢と地域を3つ並べると、人は簡単に絞られてしまう。「40代前半で、都内で会社をやっていて、離婚したばかりの人」——この程度の情報で、心当たりのある人には届いてしまう。

だからこの先も、僕は分布と類型しか書かない。彼女たちは商品を買った客であって、記事のネタとして提供された人ではない。書けることが減るぶん記事は地味になるが、そこは譲れない。以下は僕の記憶ベースの体感で、事務所の統計ではない。

客層体感の多さ依頼の出方
30代の会社員最も多い平日の夜、食事が中心。間隔は月1回前後
40〜50代次に多い昼から夕方。散歩や食事など静かな内容
経営者・管理職一定数予定が急に決まる。前日の打診も多い
自営業少数平日の昼が動きやすく、時間が長め
20代後半少数相談や会話の練習という色が濃い
学生ほぼいない料金が可処分所得に合わない
なさ男

平日の夜に来て、仕事の話をして、店の前で別れる。それが一番よくある景色だった。

依頼理由は5つに分かれる。彼氏役を求める依頼は少数だった

記事の中心はここだ。彼女たちが何のために数時間を買っていたのかを、5つに分けて整理する。事務所の分類ではなく、僕が500時間のあいだに見た出方をまとめたものだ。意外なのは順番のほうで、「彼氏らしく振る舞ってほしい」は5つのうち一番少ない。

依頼理由典型的な依頼内容こちらに求められる役
気を使わない時間が欲しい食事、カフェ、散歩何も要求しない同席者
同行者が必要な用事がある買い物、家具選び、展示、イベント判断を手伝う相手
話を最後まで聞かれたい個室での食事、長時間のカフェ助言をしない聞き役
恋愛の練習をしたい短時間のデート形式練習台と、感想を返す人
節目を一人で過ごしたくない誕生日、記念日、年末その日に隣にいる人

気を使わない相手が数時間だけ必要という依頼が最も多い

5つのうち、いちばん多いのがこれだ。職場では立場があり、家では役割があり、友人と会えば近況の説明が始まる。全部を降りられる席が、彼女たちの生活の中にはほとんどない。そこに数時間だけ席を作るのが、この仕事の中身だった。

価値になっているのは「利害関係がない」ことと「今日で終わる」ことの2つだと思う。明日以降の関係に響かない相手だから、愚痴も本音も出せる。立場のある人ほどこの需要が強い傾向は、女性経営者の恋愛が不器用に見える理由を書いた記事でも同じ形で書いた。

同行者が必要な用事があるという依頼

2つ目は、単純に人手というか、人数が必要な用事だ。服や眼鏡を買いに行く、家具を見に行く、展示やイベントに行く。一人だと決められない。店員と一対一になるのが気まずい。そういう理由で同行者を頼む依頼が、思ったより多い。

この類型で求められているのは、恋人らしさではなく機能だ。実際、依頼票に書かれているのも「彼氏として」ではなく「買い物の同行」といった用事の名前だった。この手の依頼のときは、そもそも恋愛の空気を出さないほうが仕事として正しい。

話を最後まで聞かれたいという依頼

3つ目は、聞かれることそのものが目的の依頼だ。個室のある店を指定されて、2時間ずっと話を聞く。求められているのは共感の演技でもなく、助言でもない。遮られないことと、途中でこちらの話に持っていかれないことだった。

この類型が最も多く指名につながった。理由は分かりやすい。日常の中に、最後まで聞いてくれる相手がいないからだ。聞く側に何が起きているのかについては、聞き上手がモテる理由を技術として分解した記事で細かく書いた。

恋愛の練習やリハビリとしての依頼

4つ目は、練習だ。恋愛から何年も離れていて、男と二人で食事をすることに緊張がある。いきなり本番に行くのが怖いから、金を払って練習する。この理由は、依頼票にはっきり書かれていることもあった。

「久しぶりに男の人と2時間しゃべった」と帰り際に言われたことが何度かある。その言葉が出たときは、たぶんこの類型だ。ここでこちらが本気の恋愛みたいな空気を出すのは、練習の邪魔にしかならない。

節目を一人で過ごしたくないという依頼

5つ目は日付が理由になっているものだ。誕生日、記念日、クリスマス、年末。日付が決まっているぶん依頼は集中し、1年で最も稼働が増えるのは12月だった。

この類型は、彼氏役の演技をいちばん求められそうに見えて、実際はそうでもない。求められているのはその日を一人で終わらせないことで、隣にいる人間が誰を演じているかは二番目の話だった。

なさ男

「彼氏のフリをして」より「予定を埋めて」のほうが、はるかに多い。

依頼内容の実態。彼氏らしいことより、地味な用事が多い

理由の話をしたので、次は中身の話をする。ここが想像といちばん違うところだと思う。500時間の中身には、ドラマみたいな場面がほとんど出てこない。

一番多い依頼は、ただの食事だった

予約された店に時間どおりに行く。向かい合って2時間しゃべる。店を出て、駅まで歩いて、そこで別れる。これが僕の依頼のいちばん多い形だ。夜景の見える店ではないし、記念日でもない。ただの水曜日の夜の食事だ。

話す内容も恋人らしくない。上司の話、実家の親の話、最近見た映画、飼っている猫の話。2時間のうち僕がしゃべっているのは3割もない。帰り道でいつも思っていた。この人は今日、この2時間のために自分の金を出したのだと。

買い物の同伴は「決められない買い物」の付き添いだった

次に多いのが買い物の同行だ。服、眼鏡、鞄、家具。試着室から出てきて「どう?」と聞かれるのが、この依頼の中心的な場面になる。センスを求められているのかと最初は焦った。

違った。求められているのは審美眼ではなく、決めていいという承認だ。一人だと迷って帰ってしまう買い物に、隣で「そっちのほうがいいと思う」と言う人間が必要だっただけだ。だから僕は理由をつけて答えるようにしていた。

映画、展示、散歩。会話が要らない時間もある

意外に思われるのが、ほとんどしゃべらない依頼だ。映画館で2時間並んで座って、出てきて短く感想を言って解散する。展示を歩いて回るだけの依頼もあった。始めたころは、これで報酬をもらっていいのかと本気で不安になった。

今なら分かる。一人で行くのが嫌な場所というのが、世の中にはけっこうある。そこに黙って隣にいるだけの人間が要る。会話を頑張ろうとして間を埋めにいくと、むしろこの依頼は失敗する。

写真を撮る役、イベントの同行という機能の依頼

もっと割り切った依頼もある。撮ってほしい場所で写真を撮る役、ライブやイベントに同行する役。この手の依頼では、こちらは名前で呼ばれることすらない。頼まれた役だけをやって、時間が来たら帰る。

こう書くと寂しい仕事のように見えるが、実際は最もやりやすい類型だった。期待されている内容が明確だからだ。仕事としての全体像と報酬の実数は、レンタル彼氏の仕事内容と収入を実数で書いた記事のほうにまとめてある。

彼氏のフリを頼まれた回数は、2年で数えるほどだ

「親に紹介したいので彼氏として来てほしい」「同窓会に一緒に出てほしい」——この種の依頼は、2年で数えるほどしかなかった。世間のイメージではこれがレンタル彼氏の中心業務だが、実務では例外に近い。

演技を求められることがあっても、内容は軽い。「今日は敬語をやめてほしい」「下の名前で呼んでほしい」くらいだ。それ以上の演出を求める依頼は、そもそも事務所側が受けていなかったと思う。

なさ男

500時間のうち、たぶん400時間は話を聞いていただけだ。

男性キャスト側が誤解しやすい4つのこと

ここまでは客側の話だ。ここからはキャスト側、つまり僕の側の話を書く。この先に並べる4つは、全部自分がやったことだ。客層を知るというのは、相手を分類することではなく、自分の勘違いに気づくことだったと思っている。

好意と依頼を混同する

優しくされる。名前を覚えてもらう。店を予約してくれる。前に話した映画の話を覚えていてくれる。全部が好意に見える。始めて数か月の僕は、これを完全に取り違えていた。

そのほとんどは、依頼の質を保つための振る舞いだ。気持ちよく過ごす時間を買った人が、その時間を気持ちよくするために丁寧にしている。金を払っている側のほうが場を整えている、という構造をまず飲み込まないと、この仕事は読み間違える。

指名されているから好かれていると思う

2つ目がこれだ。同じ人から何度も指名が来ると、自分が特別なのだと思いたくなる。だが指名の理由の大半は、もっと事務的なところにある。一から説明しなくて済むこと、当日の過ごし方が読めること。要するに手間の削減だ。

これは自分の価値を下げる話ではない。「説明しなくて済む相手」であることが、この仕事の商品価値そのものだからだ。指名が積み上がる仕組みの実務については、レンタル彼氏で指名を増やすコツをまとめた記事で分解している。

客の生活に踏み込もうとする

3つ目は僕の失敗そのものだ。通ってくれる人の事情を知りたくなる。なぜこのサービスを使うのか、恋人はいるのか、家では何をしているのか。ある回、僕はそれを直接聞いた。

その人からの次の依頼は来なかった。当然だと思う。彼女が買っていたのは詮索されない席で、僕はその席を自分の好奇心と引き換えに壊した。踏み込んだ瞬間に、同席者は「事情を知りたがる人間」に格下げされる。

自分だから選ばれたと思う

4つ目は、いちばん認めたくなかったことだ。僕が辞めたあと、通ってくれていた人たちは、おそらく別のキャストを指名した。それで仕組みは正しく動いている。代わりが利くのは欠陥ではなく設計だ。

ここを飲み込めない人は、たいてい客の側に感情の見返りを求め始める。そうなると仕事が続かない。自分が唯一だと思い込むのは、気持ちがいいぶん、いちばん危ない勘違いだった。

なさ男

僕は好奇心で客の事情を聞いた。次の依頼は来なかった。

客側が線を越えてきたとき、どうするか

恋愛感情の話を避けて通ると、この記事は嘘になる。疑似恋愛を扱う仕事なので、線の話は必ず出てくる。ここは感情を抜いて、事実とルールだけ淡々と書く。

性的サービスは業界のルールとして禁止されている

最初に線を書く。レンタル彼氏の仕事に性的なサービスは含まれない。金銭を対価とした性行為は売買春であり違法で、まともな事務所は例外なく規約で禁止している。手をつなぐ、ハグといった軽い接触ですら、可否が事務所ごとに明文化されている世界だ。

この線を曖昧にしている事務所があったら、レンタル彼氏の看板で別の商売をしているだけだ。利用する側にとっても同じことで、規約が明確な事務所を選ぶことが、そのまま自分の安全になる。当然の前提として、18歳未満は関係がない世界だ。

好意を向けられること自体は、珍しくない

半年も続けていれば、線の内側から手が出てくる場面は起きる。「事務所を通さずに会えないか」「連絡先を教えてほしい」。多くは悪意ではない。居心地のいい数時間を過ごした結果として、自然にそう言っただけだ。

だから断り方も、突き放す形にする必要はない。僕は「事務所の規約でできないことになっている」と、制度のせいにして断っていた。個人の意思の問題にすると相手が傷つくし、次の依頼まで気まずくなる。ルールを盾にするのは、この場面では優しさとして機能する。

事務所を通さない約束をした時点で、両方が無防備になる

断る理由は、規約が怖いからではない。事務所の外に出た時間には記録が残らず、何かあったときに守る主体がいなくなるからだ。困るのはキャスト側だけではない。相手の側も、トラブルが起きたときに持っていく先を失う。

断る側の顔をして書いているが、僕自身はこの線を一度踏み外しかけて事務所に叱られている。そのときのやり取りと、何が危なかったのかは境界線を踏み外して事務所に叱られた話のほうに書いた。要点だけ言えば、崩れ始めは「事務所を通すと高いから」の一言だった。

線を守ることは、相手を守ることでもある

ここだけは熱を入れて書く。線を消してあげることは、優しさではない。彼女たちが金を払って買っていたのは、明日以降に響かない数時間だ。線があるから安心して愚痴が言えるし、話しすぎても後で後悔しなくて済む。

その線を、こちらが良い顔をしたくて消したら、買われたもの自体が壊れる。安心して過ごせる席は、もう存在しなくなる。線を守るのは相手を拒むことではなく、相手が買ったものを最後まで渡すことだ。僕はそう理解するまでに、2年近くかかった。

なさ男

線を消すのは優しさじゃない。相手が買ったものを壊す行為だ。

4つの誤解と線の話を、自己点検の形に並べ直しておいた。当てはまるものが多いほど、指名を失う手前にいる。

男性キャスト側の勘違い、10項目の自己点検

当てはまるものにチェックを入れてほしい。全部、僕が実際にやったことだ。

0/ 10 個

当てはまる項目にチェックを入れると、その場で判定が出る。

入力した内容はブラウザの中だけで処理され、どこにも送信されない。

レンタル彼氏を利用する女性についてよくある質問

この話をすると必ず聞かれることに、僕の実感で答えておく。80人・500時間の範囲での話だ。

レンタル彼氏を利用するのは、恋人がいない女性だけ?

違う。恋人がいる人からの依頼もあった。恋人に頼むと機嫌が悪くなる用事、頼むほどでもない用事を外に出しているケースが多い。恋人の代わりを探しているとは限らないし、こちらから事情を聞くこともない。

面倒な客に当たることはあるのか

2年で数えるほどだった。時間を大幅に延ばそうとする人、規約の外を頼もうとする人はいる。ただ事務所を通す仕組みがあるぶん、その場でこちらが判断せず「規約でできない」と断れる。個人でやるより安全なのは、まさにこの点だ。

既婚の女性からの依頼はあるのか

ある。受けられる範囲は事務所の規約で決まっていて、僕がやったのは食事や買い物の同伴までだ。そこから関係を恋愛の方向へ進めるのは、相手の生活を壊すリスクを本人に押しつける行為なので、僕は勧めない。

利用する女性は、キャストに恋愛感情を持っているのか

大半は持っていない。時間に対して金を払っている自覚があるぶん、境界の意識はこちらより明確な人のほうが多かった。境界が曖昧になりやすいのは、むしろ慣れてきたキャスト側だと思う。僕がそうだった。

彼女たちが借りていたのは彼氏ではなく、気を使わない数時間だ

「どういう人が使うの?」という質問に、2年ぶんの答えを返すとこうなる。普通の人だ。仕事をしていて、友人がいて、生活が回っている人が、月に1回か2回、数時間だけ席を買っていた。

彼女たちが寂しかったのかどうかは、僕には分からない。聞いていないし、聞くべきでもなかった。分かっているのは、依頼の中身がただの食事と買い物と散歩で、求められていたのは恋人の演技ではなかったという事実だけだ。

だから最初のレッテルはここで剥がしておく。金を払って男を借りる行為は、訳ありな人の特殊な選択ではない。値踏みも詮索もされない時間が生活の中に足りない人が、それを外から買っているだけだ。買い方が珍しいだけで、欲しいものは平凡だと思う。

この仕事を始めるか迷っているなら、客層を知る意味はここにある。求められているのは彼氏の演技力ではなく、気を使わせない同席者としての振る舞いだ。相手を分類するために客層を知るのではない。自分が何を売っているのか勘違いしないために知る。

なさ男

売っていたのは彼氏役じゃない。何も要求しない数時間だった。

この記事を書いた人

元ギャラ飲みキャスト(約200回)・元レンタル彼氏(指名80人)・ヒモ経験1年半。20代の大半を「女性に求められる側」で生きてきた32歳。恋愛とお金の交差点を、実体験と失敗談込みで書いている。詳しい経歴はプロフィールページで公開中。

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